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2007年09月19日 コメント ( 22 )
これまで通りに。
2000年8月にスウェーデンへ来てから、早くも7年が過ぎ、8年目が始まりました。色々と嬉しい事やら困った事もありましたが、まあなんとか現在に至っています。今回は、そんな中でも一番辛かった事のお話です。
どうやら長男のモユルは何かしらの発達障害を有している事が分かりました。いわゆる自閉症(広汎性発達障害の一種)です。
カメラ: Canon EOS 5D
レンズ: Carl Zeiss (Contax) Distagon 35mm F1.4 T*
えー、まだ小さいんだし、そんな事は分からないんじゃないの?と思ったりもしますが、実はもう一年をかけて専門の先生に掛かり、何度も面談と診断を繰り返してきました。僕の個展の帰国中や、夏休みの中断もありましたが、先々週、モユルは自閉症だとの告知を受けました。
〈続きを読む前に〉
僕もこれまでは全く知らなかったのですが、「自閉症」とは、言葉から想像されるような、「内に引きこもる」「他の人との関わりを持たない」という類ではなく、社会生活を送る上でのコミュニケーション能力などに困難を伴う障害であると現在は判明しています。
分かりやすく言うと、普通なら相手を気遣って控えめに伝えるべき状況下でも、平気で超ストレート(他人から見れば超辛口)に言ってしまうなども、典型的な症状(あくまでも一例)です。現代では、「自閉」という言葉は症例にそぐわないと言われていますが、そのまま使用されているのだそうです。
カメラ: Canon EOS 5D
レンズ: Carl Zeiss (Contax) Distagon 35mm F1.4 T*
ちょうど一年前、モユルは幼稚園(正確にはちょっと違うけど、分かりやすく表記します)へ通い始めました。しかし、最初の2週間が終わる前日、「モユルはおそらく何かしらの心の病気があるかもしれない。ここではうまくやっていけないから、専門の先生に相談するべきだ。」と言われました。
たった2週間で分かるもの?と普通なら思うわけですが、ある意味、幸運だったとも言えるのが、この保父さん、保母さん(夫婦)の息子さんも同じ様な問題を抱えていたこと。モユルの事にも気づける知識と経験があったのです。僕がモユルの特徴として話していたことも、実は自閉症の子供達に典型的に現れる症例がとても多かった(もちろん当時、僕は全く知らなかった)事からピンと来ていたのでしょう。
確かに幼稚園へ通い始めたばかりとはいえ、もゆるは毎日、他の子供達の中に居るのをとても辛そうにしていました(遊ぶのが嫌いというわけではない。ここが難しい)。僕は単純に、”これまで常に僕たち両親と一緒にいたこと”や、”慣れない場で緊張しているから”と考えていました(まあ、普通ですね)。こういう過程を経て、子供は幼稚園へ慣れていくわけですが、モユルの場合は全く違って、緊張の日々の連続となっていたのです。
それでもモユルは泣くわけでもなく、必死に耐えていました。それまではしていなかった、指しゃぶり(幼児がえりかな?)が始まったのもこの時でした。自分自身を抑えようとしていたのでしょう。刺激の連続である集団生活はモユルにとっては負担以外の何物でもなかったのです。
なーんて事は今だから書けますが、当時の僕は全く考えてもいないことだったので、「モユルがんばれ」と思って、ちょっと厳しく突き放してみたりしていました。しかし、実際はモユルにとって、これらは全部余計なお世話だったのです。突然決まった幼稚園最終日の帰り道、モユルに多大な苦痛を与えていたのだなと気づき、さすがにショックを受けました。
いつものモユルに戻るまでちょっと時間が必要でした。
カメラ: Canon EOS 5D
レンズ: Carl Zeiss (Contax) Distagon 35mm F1.4 T*
幼稚園の先生から、相談すると良いと教えてもらったのが、検査に通った子供専門の精神科でした。ここで第2の幸運。自宅の最寄りにある病院に併設されていたんです。かなり待たされるとも聞いていたのですが、思ったより早く順番が回ってきました。後で聞いてみたら、小さい子は優先扱いになるそう。
最初の頃は面談が中心。普段の生活や、モユルの特徴などたくさん話しました。次の面談や、その次でも同じ質問があったのですが、おそらくこれは内容を確定する為だったのでしょう。年末年始の3ヶ月に及ぶ帰国後、日本での成長ぶりを報告したりしてから、今度は成長度を見る診断テストが始まりました。これは全てビデオ撮影をし、テスト中のモユルの仕草から、僕との関係までチェックされたようです。
そして、診断結果の告知を受け、モユルはやはり自閉症を有していると再認識をする事になりました。幼稚園の最終日ほどではなかったけど、覚悟をしていたとはいえ、やっぱり多少のショックがありました。
というのが、ここまでの経過。近々、新しい幼稚園の見学に行くことになりそうです。自閉症児専門もしくは、対応可能な場所になるようです。その中でモユルはトレーニングを始めることになります。そして、親の僕たちもモユルとの正しい接し方を勉強しないとね。
カメラ: Canon EOS 5D
レンズ: Carl Zeiss (Contax) Distagon 35mm F1.4 T*
自閉症は先天的な病気で、一生治ることはありません。
しかし、肉体的苦痛を伴うわけでもなく、正しい訓練を経れば、モユルが受ける精神的苦痛も減らすことができます。さらに、余命数年というような難病でもありません。愛する子供を失う辛さと比べたら、この先にあるかもしれない試練なんか楽勝です。
芸術家や科学者にはこの病気を有している人が結構いるというのも、何かを期待しちゃったりします(笑)。一つの事に人一倍(正確には百倍くらい?)熱中するというのもモユルの大きな特徴です。
そうそう、診断結果によると、どうやら僕はモユルと非常に良い関係を築けているらしいとわかりました。褒められました。これは嬉しいですね。
そして、3つめの幸運。
僕はモユルの側にいる時間を比較的、多く持てるのでサポートし易い点。
4つ目の幸運。
スウェーデンの医療福祉のサポートを受けることが出来る。高度な医療(詳しくは知らないけど、日本の医師が学びに来るほどなのだから、劣ることはないでしょう)だけでも心強いのに、ここまでの経済的負担はなんとゼロ。
そしてこれからは、お手当てを請求する権利もあるんだそうです。書類を読んでみたら、内容がすごいので驚きました。例えば、「人一倍、服を汚すので、その為の洗濯費と、多めに用意する服の費用」でもOKらしい。我が家には必要ないとは思いますが、通院に車が必要ならば、それについても善処(たぶんタクシー代が支給される)してもらえるんだとか。恐るべし、スウェーデン。
勉強できることはたくさんあるし、これからもモユルと一緒に楽しめるんだから僕は幸せ者です。人生、子育てって色々なことがあって、本当に楽しいですね。
と、僕たちはとても前向きに考えています。やたらと長い文になりましたが、ここまでご覧頂きありがとうございました。明日からまたいつも通りの親バカ、カメラバカのブログに戻ります(笑)。今後ともよろしくお願いします。
コメント
イクルさん、はじめまして。
昨年、オランダ、スウェーデン、デンマークと10日間という
短い間で出張に行ってました。
その中でもストックホルムの友人宅に3泊し、ガムラスタン等、
歩き回り、とてもいい街だと思ってます。
そして、その気持ちのままイクルさんのブログを見つけ街の写真や
子供達の写真を拝見させて頂いていました。
本ブログを見て、なんてコメントをしていいものかは分かりませんが、
ただ、私もこれまで通りにモユルくんやミチカちゃんの事を拝見させて
頂こうと思ってます。
何か変なコメントですみません。
投稿者 まこと
ikuruさん、はじめまして
毎日の日課のように、このブログ拝見させていただいております。
私の次男も25年ほど前に、自閉症の診断を受けました
今は立派な働く自閉症の大人になってます。
スウェーデンでお子さんたちを育てられること
チョットうらやましいですね・・・
これからも楽しみにしております。
投稿者 Yosuke-no-papa
ikuruさん
はじめてコメントします大阪在住のモチックです
毎日更新されるすてきな写真を楽しみに拝見しています。
現在ニコンD70でカメラの勉強中の同じく親バカです。
私も4才9ヶ月の子を持つ親ですが、半年ほど前に自閉症の診断を受け現在療育中です。
日本では発達障害者支援法が平成16年4月に施行されたところで、具体的な支援はまだまだこれからのようです。
スウェーデン医療福祉は、進んでいるんですね〜。この環境はうららましいです。
これからも、引き続き拝見させていただきます。
投稿者 モチック
ikuruさん、こんばんは。ストックホルムも寒くなってきたようですね。リンダウ<アルゴイ>のほうは2週間ほど前に山で初雪がふりました。今日の内容は正直、心にずしりときました。育児はほんとに育自ですね。これまで通り、モユルくんとミチカちゃんの成長、写真楽しみに拝見、応援しています。
投稿者 yuki
ikuruさん
こんばんは、はじめましてです
お子さん達の素敵な写真を楽しみにしております
子供達の成長記録にと昨年からカメラを手にしています
私の長男も自閉症と診断され3年程経ちました
日本では最近になって発達障害が少しずつ理解されるようになりました
しかしそれは学校の中だけのように思います
社会全体としての理解は、殆どされていないように感じます
自閉っ子達が住みよい社会になるように、親としてなにが出来るか・・・考えていきたいです
投稿者 きんぱら
ikuruさん
初めてコメントさせていただきます。
健常者・障害者・闘病者など含めて私達は皆”違い”があるだけ。とわかってはいるつもりでいるものの、やはりショックでした。
美しく愛情に満ちた写真やikuruさんのお人柄が伝わってくるかのようなコメントが大好きです。
もゆるくんは社会福祉が素晴らしく機能している国に生まれ、生まれながらに”本物”の家具や洗練されたものに囲まれながら成長していけるという、なんとも得がたい状況にいるのです。こんな素晴らしい事はありません。(^_^)
「障害は個性の一部」、以前聞いたことのあるこの言葉が今よみがえってきました。
障害よりももっと素晴らしいものを持ってそうなもゆるくんですから、その光をもっと輝かせてあげてくださいね。
これからもずっと応援しています。
投稿者 LC
ikuruさん、こんにちは。
ヴェステロース在住のるーです。
私は現在Korttidshemで働いていて、そこにいく子供たちは自閉症、あるいはアスパリアシンドロームを持っています。
「子供」に合わせた環境を作るのが、まわりの大人の務めだと思います。私が働いているところの子供たちは、たくさん刺激を与えるために、おもちゃ代なども請求していますよ。
でも、やさしいお母さんとお父さんがいつも一緒にいるのはモユル君にとってとてもいいことだと思います。でも、ご家族から遠くはなれて辛いこと、大変なことおありでしょう。
ご夫婦で助け合って無理をなさらないでください。
そのために、スウェーデンにはいろいろな助けがあるのですから。少し離れたヴェステロースに住んでいますが、もし何かお手伝いできることがありましたら、お知らせくださいね。
投稿者 るー
ikuruさん、こんばんわ。
いつもモユル君たちの写真を楽しく拝見させていただいてます。私には4歳の息子(双子)がおり、一人が自閉症です。
はじめは、嫁も私もショックでしたが、今は明るくプラス思考でやってます。
自閉症とはいえ、個性があり、日々新たな発見を与えてくれます。ハッセルとともに写欲をかき立てる良いモデルです。
投稿者 Y.Nobu
偉大なアーティストにも実はADHDが多いetc.…というような図書をつい先日、仕事場で読んだばかりです。
自閉ということばにはなんだか救いのないような響きがあります。いずれ言い換えられるかもしれませんね。
日本ではまだまだ障害に対しての社会認識も福祉援助も遅れていますからね、福祉先進国、税金は相当高いようですけど、めいっぱい享受してください。
ハンディを持っていることは、やっぱり、現実的にはいろいろ不便なこともありますが、まぁ、気持ちの持ちようで、決して不幸ではありませんし。
笑顔いっぱいモユルくん、素敵なパパとママに支えられて、きっと、健やかに成長できると思います。
投稿者 ひらりん
はじめまして。北欧(特にアアルト)大好きな主婦です。
イクルさんのブログは、デザイナーで4年前に他界した父を思い出させてくれます。カメラ、大好きでした。ジャンセン(っていうよりシルバー製品)、大好きでした。今思うのは、世に残せる仕事ってすばらしいなと思います。商業デザイナーだったので父がデザインした看板とかを見るとそう思います。まあ、普通よりはかなり変わった人だったです。そして私はたぶんADHD。娘も発達障害気味です。まだ二歳なのでわかりませんが。
私個人の意見は、発達障害は個性と見たほうがいい場合もあると思います。そして導き方ですごく違ってくるんだそうです。
これからもイクルさんの研ぎ澄まされた感性を楽しみにしております。
ブリオのカート、うちの娘にもまねっこして買いました。^^
へんてこりんなコメントでゴメンナサイね~
投稿者 まりも
上記コメントの中、
>偉大なアーティストにも実はADHDが多いetc.…
はLD(学習障害)の間違いですね。すみません。
投稿者 ひらりん
皆さん
たくさんのコメントをありがとうございました。こんなに多くのご意見を伺えて嬉しく思います。
ちょっと変わった素敵な特徴を持った子として、これからもモユルと接していこうと思っています。病気の事が分かる前に思っていたこと、そのままです。
これからもよろしくお願いします。
投稿者 Ikuru
こんにちは。私も子供も発達障害と診断され、(一歳半検診で)。でも、治療の結果、すごくよくなり、現在も治療中ですが日々正常になっています。よかったら、この本を読んでください。岩佐京子著作『自閉症の謎に挑む』『テレビに子守をさせないで』他多数。結論から言いますと。テレビやラジオ他、の音刺激が自閉症の原因他言葉の発達やその他の発達障害の影響の原因になってるという内容です。その治療法で正常になった子供も多数おり、読んでみたらどうだろうと思います。年齢的にみると早ければ早いほうが治療にはよく、影響が出るようです。参考になればと思いお知らせした次第です。
投稿者 今泉寛子
今泉寛子さん
こんにちは。その岩佐京子さんの(30年前の)著作は非常に否定的見解が多い物だということをご存じですか?自閉症に対する問題書籍にも挙げられるほどの物です。
現在の研究では、テレビなどの外刺激は自閉症の原因としては関係ないとされています。受け身ばかりになるテレビを見過ぎたら何かしらの影響がでるだろうなというのは確かに分かりますが、先天的な病気であり、かつ完治することは無い病気である自閉症とは違う物と考えます。
また、”正常になっている”という表現にも疑問を覚えます。”発達障害の無い正常な子供のように見える”というのが適当でしょう。そういう一般の子たちと同じように生活できるようにするのが現代のトレーニングだと私は理解しています。
ちなみに、我が家ではほとんどテレビを見せていません。部屋にあるのですが、全然使わないので邪魔なぐらいなんです。
とはいいましても、今泉さんの場合はお子さんの状態改善に繋がったようですので、良かったですね。
投稿者 Ikuru
ひさびさ!
オイラも不治の病を抱えてしまったものですが、考え方で物事の風向きは変わってくると、最近やっと、やーーーーっと、感じるようになったよ。
行間では把握できない、色々な葛藤や悩みはあったと勝手に憶測するけど、、、
「個性」は伸ばす方向で、大きく変わると思う。33にして、ウチのアホ社長にもワタクシの「才覚」になぜ気付かない(笑)、とマブに心配してますから、、、。
冗談は、ともかく。その「個性」を引きだせる、理解者にめぐまれているモユルくんは、お世辞でもなんでもなく、幸せだと思う。
とかく日本は価値観が固定されやすいし、そうなるように教育(仕向け)されているようにも感じる。
「異なる」ものではなく、「個性」を伸ばす。そこから、オリジナルが生まれるんだからね。
言葉足らずですが、応援してますよ!
投稿者 tschiwo
tschiwoさん
そう、もゆるのちょっと変わった個性として考えてあげられるようにしています。今後、どのようにこの特徴を発揮するか楽しみですよね。
投稿者 Ikuru
はじめまして。
MIXIから来ました。
すてきなブログですね。
うちには3人の男の子がいます。
次男が重度の自閉症と知的障害を併せ持っています。
私はあまり海外には行ったことがないのですが
素敵なところに住んでいらっしゃいますね。
またよらせていただきます。
投稿者 げんまま
げんままさん
はじめまして!ありがとうございます。そうですね、子育てをするにはなかなか良い環境だと思っています。散歩に行きやすいのが特に良いですね。
これからもよろしくお願い致します。
投稿者 いくる
はじめまして、ボクもmixiから来ました!
今年小学生になる長男が自閉症です
適切な療育を早く受けることができれば、一般社会でも適用しやすく住みやすいスキルを身につけることができると思います
海外だと不便なこと沢山あるでしょうね
長い人生ですし息抜きしながらやっていきましょ〜〜
投稿者 もえまん
もえまんさん
はじめまして!そうですね、息子が負担に感じない様、自然に身に付く様にサポートして上げられたら良いなと思います。
>長い人生ですし息抜きしながらやっていきましょ〜〜
大丈夫ですよ〜。かなり楽しみながら過ごせています。毎日が息抜きくらいに思っています(笑)。←楽観的?
投稿者 いくる
はじめましてこんにちわ、とてもかわいらしく美しい写真に癒されました。
私の子供もつい先日2歳半で高機能自閉症の疑いがあると臨床心理士さんに言われ、
医師に診断をしてもらうために療育センターという所へ予約をとりました。
なんと4か月まちです…
モユルくんの小さい頃からのお話も読ませていただきました。
家の子も似たことがあり思い当たることが沢山…
今しばらくは気持ちの整理がつくまで辛い時期ですが、
2歳児って本当に面白くってかわいいさかりなので悔いのないように
親子で毎日の生活を楽しみたいと思っています。
投稿者 aya
ayaさん
はじめまして。スウェーデンでも各検査は結構な待ち時間です。こういうデリケートな問題は早く進めたいですよね。とりあえず、前向きな気持ちでいらっしゃることは素晴らしいと思います!
投稿者 いくる