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2008年03月04日    コメント ( 9 )

自閉症の診断書をもらう。

モユルが自閉症だという診断結果自体は去年の9月(このへんを参照)に受けていたのですが、やっとそれらが文章で記されている書類をもらうことが出来ました。

ということで、自分の勉強がてら、内容を公開しちゃいます。え、良いのかって? うん、良いですよ(笑)。

注:各書類の個人情報や、具体的な記述は判読不能に修正してあります。僕が内容を適当に訳していますので、日本語での専門用語とは全く異なるかもしれませんし、適切な訳文では無い可能性が大いにある事をご了承ください。

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この書類は、先生の診断/見解書。障害手当を申請する際に添付する大事な書類。自閉症児向けの物ではなく、介護や世話が必要なハンディキャップを持った者だということを医師が記す証明書類です。

以下、書類の内容。
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-診断期間
2006年12月から2007年8月
(イクル注:これはテスト期間。面談などはもっと早くから行っています)

-病気の経歴
モユルは二人兄妹の兄で、両親共に同居。子供二人ともスウェーデン生まれ。両親は、父親がマルムステン校で家具製作を学ぶために、2000年に日本からやってきた。出産には特に合併症も無く、問題なく済んだ。BVC(定期的に通う小児科)の記録によると、モユルはとても大人しい子だが、人とのふれ合いにおいて病気というほではない、と記されている。2007年夏に保育園で受けたアドバイスを元に、自閉症かもしれないと疑問を持った。

成長曲線を見ると、最初から頭囲が大きい。これは日本では異常な値ではない(ここを読んで、さすがに大笑い。両親も頭が大きいからねえ)。6ヶ月頃に補助無しで座れるようになって這い始めたのに対し、歩行デビューは18ヶ月過ぎと遅かった。

常に注意深く、積極的な行動をためらう。よじ登ったり跳ねたりする事に興味は少ないようだ。三歳の時点で数語の語彙と言語発達は遅かったが、言われたことはほとんど理解できているようだ。早い時点で、モユルは他の子供に興味を示さないと気付かれていた。常に決まり事を守り、細かく周囲を観察している。

水の流れを見続ける事に喜びを感じる。可動部分の無い人形や縫いぐるみには全く興味が無い。おもちゃの車がどうやって動作するのかをつぶさに観察する。ちょっとした特徴に非常に大きな興味を示し、また同じ事を延々と続け、他のことに切り替えるのが難しい。地図が好きで、道路や線路を指でなぞっていくことに熱中する。おもちゃを他の子に貸すことは全くない。

モユルは新しいことや変化に対して、すぐに戸惑い緊張する。変化の少ない安定した日常が一番良い(イクル注:とはいえ、新しいことに挑戦するという刺激も必要)。モユルの外見は年齢相応で特に問題は見受けられない。最後の検診の際には、かなり感情を抑えてはいたがアイコンタクトは出来ていた(イクル注:先生と一緒に遊んでみた)。運動力検査では問題は見受けられない。

-診断
自閉症シンドローム

-モユルに必要な事柄
保育園でも継続的な指導と、大人による補助が必須。日々の良い成長の為に、モユルは同年代の子よりも両親の補助が必要である。今後数年先、おそらく成年期まで、適切な指示と世話によるサポートが必要である。

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これはPEP-R(Psycho- Educational profile revised i swedish version)という発達検査における評価書類。知覚、運動能力、目と手を同時に操る能力、認識力などについて構成されています。全部書くと大変なので、簡潔にまとめてみました。各項目に記されていることは出来たことのみ。(合格項目および、もう一息だった発達段階と認められた項目。おそらく、出来ない事は意図的に書かれていない。)。もう一つ、ADOS(Autism Diagonostic Observation Schedule)という診断テストも受けていますが、そちらも書き出すと大変なので、とりあえず今回はパス。

以下、書類の内容。
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2007年5月に、2回のテスト(中5日)。ほぼ4歳(47ヶ月)。

テストの環境下での振る舞い。
(イクル注:安定した日常生活とは異なり、モユルにとってはストレスを感じる状態)

モユルは目を合わせることを避ける子で、診断初日はテスト素材(おもちゃなど)に対して興味を示さず、まずパパに試しにやらせるほどで、何かを示す際には、パパの手を使って指差していた。モユルはスウェーデン語は話せないが、2-3語文の日本語を話せる。パパの問いに答えられるが、瞬時では無い。

テスト2日目、モユルは前回よりもオモチャなどに興味を示し、自分で取りに行く。モユルは試験官に対して一定の壁を設けているが、パパとのやり取りはすごく楽しんでいるパパは言葉や表情が非常に豊かで、面白い方法でモユルがテストを理解できるようにしていた

-Imitation 模倣
他の者が話すことを繰り返したり、やったことを真似してみる能力。

16項目中、3項目が合格。2項目が発達段階。猫や犬のぬいぐるみを用いて鳴き声の真似が出来た。もゆる自身の振る舞いや、音の世界を持っている


-Perception 知覚
音に対する反応、目の動き、決まり事を理解する、色や大きさを判断する能力。

13項目中11項目が合格。他には一つだけ発達段階。移動したコップの中に隠されている物をちゃんと見つけること(追随)が出来た。


-Finmotorik 微細運動
手の扱いと、物を掴む能力。

10項目合格/16項目中。瓶の蓋を開けられた。シャボン玉を吹けた。複数の木のパーツに糸を通せた。ハサミを扱える。


-Grovmotorik 粗大運動
腕や脚、筋肉を使った運動能力。

13項目合格/18項目中。交互の脚を使って階段を上れる。椅子に一人で座れる。ボールを置いたり、運んだり、投げたり、蹴ったり出来る。コップの水を一人で飲める。右足が利き足。


-Öga-hand integration 目と手の協応
物を積んだり、一緒にまとめたり、穴に糸を通したり、色合わせなどの、目と手を同時に使う能力。

5項目合格/15項目中。3項目は発達段階。正しい大きさに当てはめるパズルが出来る。同じ文字を選び出したり、ブロックを積み上げたり、箱の中にブロックを入れたりも出来る。


-Icke verbal kognition 言語理解
言語の理解力検査。ここでは言語に依存しない課題を、どの様にこなすかを見る。

10項目合格/26項目中。5項目が発達段階。人形の体の部位を示すことが出来る。モユルは大小を表現でき、色の見分けも素早い。隠れている物を見つけられる。二種類の指示に従って、仕分けることが出来る。


-Verbal kognition 言語表出
コミュニケーションの元となる、身振りや話し方などの表現力。

4項目合格/27項目中。2項目が発達途中。大きさの違いや、色を(日本語で)表現できる。身振りも加えられる。


-要約
3歳11ヶ月(テスト時)のモユルの発達が遅れている事を、テスト結果は示している。合格した項目だけで見ると、約2歳相当で、発達中の項目も含めると、一般的な2歳半ほどの子供と同じである。知覚は年齢相応で、視覚、聴覚による理解度も良い。

会話と模倣力の発達が一番遅れているが、パパとの会話は成り立っている。自宅以外では日本語に触れられない環境にいることは考慮できる。模倣テストの際、モユルからの積極性はあまりない。彼なりの音や仕草で試験官の振る舞いに反応したりと内容は理解しているが、自発的に真似をすることはない。

モユルはとても慎重な子で、他の大人と目が合うのを避け、あまり興味を示さない。パパと一緒に楽しめる能力は力になる。モユルの成長を促進するために、彼には補助が必要である。しっかりと整った教育環境の元で、モユルの特性を養える指導をすることを推薦する。

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これがモユルの発達度を見るグラフ。横に一本引いてある実線が検査時の年齢(この線周辺なら一般的な値になる)。黒丸で引かれている折れ線が、合格項目から判定された検査時の発達度。白丸の破線は発達段階(もうちょっとで合格域)を加えたもの。2歳相当の発達度と判定されました。

この様に、一部が突出したり、極端に低い値になるのは自閉症児の特徴です。普通に優秀な子や、ちょっと発達が遅れ気味の子の場合は、どの値も同じくらいになるそうです。モユルの場合は、模倣力が1歳児並みに低く、逆に他の発達度合いと比べると知覚がやたらと高いのが良く分かります。

現在のモユルはこの時よりもずっと成長していると思うけど、適切なトレーニングは必要でしょう。これらを踏まえて、今度は障害手当(補助がもらえる)の申請準備を始めました。


 
 

コメント

すごい。オフィシャルな書類で、ここまで明確にサポートが必要と記してあって、子どもの将来をきちんと考えてくれている感じがありますね。。ちょっと感動。

投稿者 nz


いくるさん
自閉症と頭の大きさにかんする研究は結構行われているんですよ。
http://www.crn.or.jp/LIBRARY/NEWS/2003/0309.HTM
4年くらいまえにニューズウィークでみてへ〜っと思いました。
うちの子も発達検査の結果はジグザグです......

投稿者 もえまん


そうだったんですか、モユルくんの写真が多いな?とは思っていましたが。
私は自閉症のことをほとんど知りません、どう対応したら良いのか全く知識がありません。何も出来ることはないかも知れませんが、少し深く考えてみたいな、と思いました。

投稿者 くら


ふと、近所に私より一つ上の自閉症の男の子が居て、
子供の頃皆で遊んだ事を思い出しました。
遊ぶと言っても、彼と私達は意思疎通が難しかったので、
彼が興味を示したものに、私達も乗っかるって感じでしたが^^;
ツボにはまったらものすごーーーく良い笑顔になってたのは覚えてます。

モユルくん、いろいろなテストを受けてたんですね。
この診断書は、これからもモユルくんにとってパパという存在が、
とても重要なものであると言う事も示していますよね。
Ikuruさんの心の広さがあれば、モユルくんも安心だ^^

投稿者 kaokao


親子で頑張ってくださいね

投稿者 マーママ


色々なものごとはそれぞれ必然であって、偶々という事もそう見えるだけなのだと思っています。どちらにとっても、必要な存在なのでしょうね。

自閉症に関しては、神経生理というか解剖学的だったか、色々と研究も進んでいる様ですが、何より必要な事はこの書類が的確に示している様です。悩みが出る事もあると思いますが、家族揃って育っていかれるものと思います。

少し前に即席打楽器の話題がありましたが、音への感覚も独特で繊細なものがある様な気がします。音楽好きだったりするのでしょうか。それとも、純粋に音への興味があるのかな…?イルカの鳴き声のCDとか、じっくり聴き入ったりするかも知れませんね。

投稿者 ts


nzさん
日本ではどんな風に書かれているんでしょうね。参考になるかと思って載せてみました。

もえまんさん
その記事、僕もNewsweek上で読んだような気がします。当時はネット上でバックナンバーを読めて便利だったのですけどね。最近は発売と同時に閲覧は出来るけどWindowsのみなんですよー。。。有料なのは良いんだけど、Macにも対応して欲しいです。
もゆるの頭囲の成長曲線を見る限りでは、急速な成長は見受けられませんね(たぶん)。

くらさん
そうなんです。時々、このブログにも書いています。でもモユルの写真が多い事はそれとは関係ないですね。ブログトップページの右側にあるカテゴリー内の04.3.1 保育園/自閉症関連にそのへんの事をまとめてありますので、ご興味がありましたらご覧くださいね。

kaokaoさん
そうですね、モユルもツボにはまると楽しそうに遊びます。それをうまく見つけ出してあげられる様になりたいですね。

マーママさん
ありがとうございます。

tsさん
はい、親のサポートが普通の子よりは多く必要ですが、一緒に楽しんでいこうと思います。音への興味もあると思います。何か形になったら面白いですね。

投稿者 いくる


はじめまして。
すてきな写真とモユル君のかわいい表情にひかれて
以前から時々、拝見しています。
日本で特別支援教育(っていうようになりました)の教員をしているので
モユル君が自閉症と知って、余計に親しみを覚えています。
美術の教員なので、よく自閉症の子どもたちだけのグループを作って
授業をしていたのですが、自閉症の子どもたちの作品というのは
独特のものが多く、とてもおもしろいのですよ。
モユル君もすてきなアーティストになりそうですね。

PEP-Rの訳文に苦労されているようなので
日本の書籍で訳されている用語をお伝えしますね。
模倣、知覚、微細運動、粗大運動、目と手の協応、言語理解、言語表出、です。

日本では、こういう検査を受けられる病院が数少なく
なかなか子どものニーズに即した教育が保障できない現状なので
スウェーデンでの丁寧な取り組みがうらやましいです。

投稿者 とらじろう


とらじろうさん
はじめまして。そして、ありがとうございます!
日本語での用語が分かり助かりました。後ほど、修正しておきますね!
これからもよろしくお願いいたします。

投稿者 いくる


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